頭取メッセージ

取締役頭取 深井 彰彦

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中のあらゆる分野に大きな影響を及ぼしました。私たちは、いかなる状況においても金融仲介機能を十分に発揮し、地域経済を支えていく使命を帯びており、全力で地域経済の支援にあたってきました。特に、地域への円滑な資金供給において、2021年3月末までに約1万9千先から事業資金に関するご相談を受け、3,977億円のコロナ関連資金の貸出を実施しています。
私たちは、企業理念の一番目に「地域社会の発展を常に考え行動すること」を掲げており、SDGs宣言でも重点課題の一番目に「地域経済の持続的発展」を掲げていますが、コロナ禍を通じて、改めて私たちの地域社会に対する役割の重要性と責任の大きさを認識した1年となりました。
また、新型コロナウイルスは、経済への影響だけでなく、新しい生活様式やデジタル化の加速など、さまざまな変化をもたらしました。こうした環境を踏まえ、私たちは引き続きお客さまの金融支援に全力で取組むのはもちろんのこと、お客さまの成長に資する支援メニューの充実や、持続的な地域社会構築への取組みが一段と重要になると考えています。

当行の存在意義

当行は、中期経営計画「Innovation 新次元~価値実現へ向けて~」において、お客さまと当行双方の「価値実現」を掲げています。私たちがお客さまに対して実現すべき価値は、次の二つの要素が重なる領域にあると考えています。
一つは、地域社会やお客さまの課題やニーズ、そしてもう一つが当行ならではの中核的な強みであるコアコンピタンスです。すなわち、当行ならではの強みを活かし、地域社会やお客さまの課題やニーズを解決していくことが、私たちが実現すべき価値であり私たちの存在意義です。私は、こうした価値を正しく定義し、有効に経営資源を活用していくことで、お客さまや地域社会のサステナビリティに貢献できるとともに、当行の持続的な収益向上にも繋げていけると考えています。

地域やお客さまの課題

当行の主要営業地域である群馬県は、豊かな自然環境による魅力的な観光資源と豊富な農畜産物を兼ね備え、輸送機器や食品を中心とした製造業が経済を牽引しています。近年も高速道路など交通網の整備が進み都心へのアクセスが良好なことや、自然災害も比較的少ないことから、工場立地件数・立地面積は全国上位が続いています。
一方で、高齢化や人口減少に伴う地域の持続可能性、特に事業承継や人材の不足、生産性の向上等が重要な課題だと認識しています。例えば、事業承継については、後継者不在の相談だけでなく「後継者へ株式を集約したい」、「2人の親族へ承継させたい」などさまざまな要望がありますし、人材については、「社長の右腕になる人材が欲しい」、「新たな事業を任せられる管理者が欲しい」といったニーズが増えています。

当行のコアコンピタンス

では、私たちならではの中核的な強みであるコアコンピタンスは何か。
私は、お客さまとのネットワークとリレーションに基づく「情報力」だと考えています。当行は、1932年に誕生した群馬大同銀行をルーツに持ちますが、戦後すぐに県外に支店を開設するなど、首都圏に至る広域の営業ネットワークを築いてきました。こうしたネットワークに基づく長年のお客さまとの取引や、信頼関係の中で培った広くて深い情報の蓄積が、まさにコアコンピタンスとなっています。営業活動の中で得られた日々の情報は、CRMシステムに蓄積されていきますから、情報を繋ぎ合わせることでお客さまや地域の課題解決に繋げたり、AIなど最新技術を活用することで新たな価値の提供や新たなビジネスにも繋げたりできると考えています。また、2020年12月に地銀広域連携「TSUBASA アライアンス」に参加したことにより、当行のネットワークに限らず他行と連携することで、課題解決の幅はさらに広がりました。
こうした強みを活かしてお客さまの価値を実現することを目指し、私たちは中期経営計画「Innovation 新次元」に取組んでいます。

中期経営計画「Innovation 新次元」の取組み

中期経営計画のコンセプト

当行では、2019年3月までの6年間にわたる2回の中期経営計画において、「価値ある提案」を基本コンセプトに、当行ならではの提案を行いサポートすることで、地域とお客さまとともに成長することを目指してきました。2019年4月から3年間の中期経営計画では、「価値の提案」を礎に、その提案価値を「実現」させることに主眼を置き、めざす企業像を「金融サービスの革新により、お客さまニーズに応え、価値を実現する金融グループ」としています。
めざす企業像を実現するための基本方針には、「3つの改革による経営プラットフォームの転換」と「ビジネスモデルの進化による高度な価値実現」を掲げています。地域課題や環境の変化も踏まえ、どのような価値を実現できるか、さらに深掘りしていきたいと考えています。

2021年度の取組み

2021年3月期は、与信費用の増加により最終利益は減益となりましたが、ぐんぎん証券を含むグループの預かり金融資産業務が伸長したこともあり、連結非金利業務利益は191億円と、中期経営計画最終年度の目標である200億円に対して95%まで進捗しています。その他の主要計数も概ね順調に推移していると認識しています。
2021年度は、事業承継支援や相続関連サービスなど、行内で強化してきた支援態勢を活かしてお客さまの課題をより多く解決し、当行の収益にも結実させる1年間にしたいと考えています。
また、新型コロナウイルスにより、これまで認識しつつあったさまざまな環境変化のスピードが加速していますから、「3つの改革」もさらにスピードを上げて取組んでいきます。プロセス改革としては2021年1月から順次行員に配付しているモバイルパソコンを起点に仕事の質や生産性を高めていきます。チャネル改革では、TSUBASAアライアンスとも連携しつつ、アプリの刷新などデジタルチャネル向上に取組んでいくとともに、店舗網の見直しをさらに進め、行員をコンサルティング業務など付加価値の高い分野に再配置していきます。人材改革は、貢献度に応じた人事制度の整備や、タレントマネジメントシステムを活用した戦略的人材配置、研修制度・自己実現支援・自己啓発支援による人材育成支援を強化していきます。

次期中期経営計画策定に向けて

2022年4月から新たな中期経営計画をスタートさせますが、現在の「価値実現」のコンセプトを引き継ぎつつ、お客さまにどのような支援ができるか、さらに深掘りしていくことが重要だと考えています。収益力の向上と並行して経費の見直しも重要だと考えており、日本銀行による「地域金融強化のための特別当座預金制度」にチャレンジすることで、経営の質をより高めていきたいと考えています。その上で、銀行法改正等による規制緩和を受け、新たな成長領域への取組みを探索していきます。具体的には、地域の課題を考慮し、地域商社や登録型人材派遣について行内で議論を行っています。
さて、当行ならではの強みと地域やお客さまの課題が重なる領域が、私たちが提供すべき価値であり存在意義であると申しあげましたが、この領域を当行の「パーパス」として改めて定義を行おうと考えています。私たちの企業理念は、私たちはどうあるべきかといった価値観や行動基準を包含した普遍的な概念です。企業理念で定義する行内的な視点をベースに、対外的な視点、すなわち私たちは社会に対して何ができるのか、どんな価値を提供するために存在しているのかといった概念を追加します。パーパスは行外のステークホルダーの皆さまから共感を得られるものでなければいけませんが、さらに重要なことは、行員の判断や行動の軸として浸透させることだと考えています。そこで、パーパスを自分ごととして捉えてもらうために、全行員から任意でパーパスに関する意見を募集しており、集まった意見をもとにしっかりと議論し、パーパスを定め、来年度から始まる次期中期経営計画にも反映していきたいと考えています。

ESGの取組み

環境への取組み

環境や社会問題に対して、金融機関として主体的な役割を発揮し、持続可能な社会の実現に貢献していくことが重要であると考えています。2021年6月に、環境負荷の高い事業や人権・貧困問題の根源となるような投融資を制限し、環境や社会への好循環を促すため、「環境・社会に配慮した投融資方針」を制定しました。並行して、サステナビリティ・リンク・ローンの取扱いを開始し、お客さまの環境や社会課題解決に向けた取組みの支援も強化していきます。
また、当行では「地球環境の保全と創造」に向けた取組みとして、温室効果ガス排出量と紙の使用量における削減目標を設定しています。行内では諸会議や各種申請書のペーパーレス化が進んでおり、2020年度のコピー用紙使用量は2013年度比で30.2%削減し、2025年度の目標として掲げた30%削減を前倒しで達成しています。現在、お客さまへの預り証や契約書等の電子化も進めており、さらに紙の使用量削減を進めていきます。

地域のサステナビリティに向けた取組み

2020年12月に投資専門子会社「ぐんま地域共創パートナーズ」を設立し、資本支援を伴う地域企業への事業再生や事業承継支援、ベンチャー支援が可能な体制を整備しました。2021年3月には産学官金連携による「ぐんま次世代産業創出・育成に関する連携協定」を締結し、次世代産業の創出・育成を積極的に行い、地域の活力向上を目指していきます。
また、群馬県の主要産業として製造業、特に自動車などの輸送用機器や観光業が挙げられますが、CASEといった業界を取巻く環境の変化やコロナ禍を経て、大きな産業構造の変化が予想されます。そのような中で、私たちは地域金融機関としてどのような役割が担えるのか、自治体や外部企業とも連携しつつ議論を進めていきたいと考えています。

ガバナンス強化への取組み

取締役会の実効性確保の前提条件である多様性を確保するため、「スキルマトリクス」を作成し、株主総会招集通知や統合報告書等への掲載を行いました。スキルマトリクスを通して、取締役および監査役に期待する役割や構成の適切性についての開示情報を充実させていきます。

おわりに

私たちは、「群馬銀行グループの価値創造プロセス」にあるさまざまな資本を活用し、これまで申しあげてきたような取組みを通してステークホルダーの皆さまに価値を提供することで、持続可能な地域社会の実現と経済的価値の創造に努めていきます。
私は、好循環を築いていくうえで、特に重要な要素が人的資本であると考えています。当行は人材改革に対するさまざまな取組みを行っていますが、私自身も従業員に対してあらゆる仕事に有意味感や納得感を持ってもらうこと、すなわちセンスメイキングを重視し、支店長会議や施策の意義を行員向けに伝える場として設けている「行員向けIR」で行員に語りかけています。
デジタル化への投資はもちろん加速して進めていきますが、デジタル化が進むほど人にしか提供できない価値が重要になってくると考えられます。デジタルを活用しながらさまざまな情報を繋ぎ、私たち群馬銀行グループの一人ひとりが金融面にとどまらない幅広い価値の提供に取組んでいくことで、お客さまとともに新たな地域社会を創造していきます。
最後になりますが、皆さまには、今後とも温かいご支援を賜りますよう、心からお願い申しあげます。

2021年7月
代表取締役 頭取 深井 彰彦