頭取メッセージ

取締役頭取 深井 彰彦

はじめに

最近の経済情勢をみますと、緩やかな回復基調で推移してきた国内景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により急速に悪化し、極めて厳しい状況に一変しました。
金融機関を取り巻く環境も、マイナス金利政策の長期化によって貸出金や有価証券運用利回りの縮小が続いていたところに、感染症の影響による世界的な金融資本市場の変動が重なり、更に厳しさを増しております。こうした世界的な経済情勢の急速な変化は、2008年のリーマン・ショックをも上回る影響を国内外に及ぼしつつあり、地域経済にも著しい影響をもたらしています。
私たちは、社会や経済の安定に不可欠なインフラの一翼を担っており、いかなる状況においても金融仲介機能を十分に発揮し地域経済を支えていく使命を帯びています。このような困難な局面にこそ地域金融機関としての真価が試されるときであると認識し、お客さまの支援に全行を挙げて取組んでおります。
人口動態をはじめとした地域経済社会の構造変化や、デジタライゼーションの進展によるライフスタイルやビジネスモデルの変化は、感染症の世界的な流行と相まって、変化のスピードをさらに加速させています。
このような環境の急激な変化を前向きに捉え、地域経済活性化への取組みや収益構造の抜本的転換、事業承継や相続関連などの顕在化するニーズへの対応、デジタルトランスフォーメーションへの取組みなどの諸課題に手を打ち、強固な経営体質を構築していきたいと考えています。

経営課題へ対処するために

これまで私たちは、地域金融機関として預金や貸出を中心に事業を展開してきました。しかしながら、先に述べた経営課題に対処するには、取組むべき事業を再定義する必要があると考えています。一度、既存のビジネスから目線を離して、当行のコアコンピタンス、つまり「お客さまに対して価値を提供することができる、他社には真似のできない、私たちならではの中核的な強み」を捉え直すことが有効だと考えています。当行の経営資源を、正しく理解・定義した上で有効に活用することができれば、新たな価値を創造し、お客さまや社会に貢献できると考えています。

では、私たちのコアコンピタンスとは何か。

まずは、お客さまとのネットワークとリレーションに基づく「情報力」があります。
当行はこれまで、地理的なマーケットの拡充に積極的に取組み、一定の成果を上げることができました。私たちが今まで築いてきた、県内外の3万4,000先を超える法人・個人の事業者のお客さまとのネットワークは一朝一夕にできるものではなく、そこから得られる情報は、従来からの預金や貸出ビジネスのみならず、新たなビジネスの起点にもなります。

また当行には、これまで培ってきた「提案力」があります。
当行は、コンサルティング営業の強化を営業戦略の柱として、行員の提案力強化に取組んできました。個人のお客さまに対しては、各営業店の支店長を講師とした資産形成等に関するセミナーを年間600回以上開催するとともに、「ぐんぎん証券」との銀証連携の強化によってお客さまの多様なニーズに応じた最適な提案に努めています。
事業者のお客さまに向けては、「ぐんぎんコンサルティング」の設立や「人材紹介業務」の開始などにより経営課題の解決に力を注いでおり、2019年度は事業性評価の実施によって明らかになったお客さまの経営課題等のうち、739件を解決まで導くことができました。
こういったコアコンピタンスを基盤に、例えば、事業承継ビジネスや相続関連ビジネスなど、お客さまや地域のニーズが大きく、今後も事業規模の拡大や収益化が十分に可能な分野に注力したいと考えています。
ただし、どの要素が有効かは市場環境や競争環境によっても異なり、築いた競争優位も市場の環境変化とともに陳腐化するため、コアコンピタンスの再定義や新たな能力の育成などの努力は欠かせません。

中期経営計画「Innovation 新次元」

2019年4月にスタートした、2022年3月までの3か年を計画期間とする中期経営計画「Innovation 新次元~価値実現へ向けて~」は、これまでに述べた考えを体現したものです。
当行では、過去6年間に亘る2回の中期経営計画において、「価値ある提案」を基本コンセプトに、当行ならではの提案を行いサポートすることで、地域とお客さまとともに成長することをめざしてきました。新しい中期経営計画では、「価値ある提案」を礎に、その提案価値を実現させることに主眼を置き、めざす企業像を「金融サービスの革新により、お客さまニーズに応え、価値を実現する地域金融グループ」としています。
めざす企業像を実現するための基本方針には、「3つの改革(プロセス・チャネル・人材)による経営プラットフォームの転換」と「ビジネスモデルの進化による高度な価値実現」を掲げました。新型コロナウイルス感染症による環境の急変も踏まえ、計画した取組みを更に加速・深化させていきたいと考えています。

中期経営計画で掲げた連結計数目標は、1年目の2020年3月期決算においては、概ね計画通りに進捗することができました。ただし、収益構造の転換に向けて拡大に注力してきた非金利業務利益については、ぐんぎん証券やぐんぎんリースなどの子会社が順調であったものの、銀行本体が伸び悩みました。
2019年度は、事業承継支援・相続関連サービスともにヒアリングやプレゼンテーションを通して、お客さまごとに現状の課題やめざすべきゴールを共有することに重点を置いた活動を展開してきました。2020年度は、専担者の増員などによって整備した態勢・能力を存分に発揮し、グループ会社機能も最大限活用しながら、お客さまの個々の課題やニーズに応じた最適なソリューションを具体的に実現させていくフェーズにしたいと考えています。お客さまと共有したゴールからバックキャストによりタイムラインをしっかりと引き、それに対応して必要なステップが適切に進捗するプロセスを積み上げ、お客さまの課題解決を実現し、当行の収益へも結実させていきます。

また、それらを可能とする経営プラットフォームへの転換に向けて「3つの改革」についてもそのスピードを早めていきたいと考えています。新型コロナウイルス感染症の影響によって私たちの生活様式やマインド、社会環境も一変し、オンラインでのコミュニケーションやペーパーレス、印鑑レスなどが急速に普及することとなりました。この機会に計画でも掲げている「DigiCal戦略」を加速させ、インターネットバンキングやアプリ、WEB完結サービスの利便性向上やWEBを活用したお客さまとのコミュニケーションの実践などにより、お客さま接点のデジタルシフトを進めていきます。

ガバナンス等の強化と資本政策

ガバナンス態勢の強化やリスク・収益・資本の一体的管理・運用に向けた取組みについてもさらに前進させていきます。
これまでも、独立社外取締役と代表取締役で組織する指名諮問委員会や報酬諮問委員会の設置をはじめ、譲渡制限付株式報酬制度および業績連動型株式報酬制度を導入するなど、ガバナンス態勢の強化に努めてまいりました。2020年6月には社外取締役を1名増員するとともに、新たな社外監査役を迎えたことで、より実効性の高いガバナンス態勢を構築することができました。取締役会の構成も1/3以上が社外取締役となり、企業経営や金融、法務などそれぞれの有する専門性やジェンダーの面で、バランスの取れた態勢になりました。

経営管理の枠組みとしては、限られた資本と経営資源を最大限有効活用し、リスクとリターンの最適化を図る手法である「リスクアペタイト・フレームワーク」の構築と活用を進めます。金融機関にとって、持続可能なビジネスモデルの構築に必要不可欠なものだと思っています。経営体力に即した形で、収益のために必要なリスクは進んで受け入れていくとともに、営業現場においても、リスクに見合った収益を確保するという貸出推進を定着させ、収益性の高い貸出金ポートフォリオの構築をめざしていきます。

株主還元については、財務体質の強化に努めるとともに、安定的な配当を継続する基本方針の下、業績連動型の株主還元を実施する方針です。なお、配当と自己株式取得額を合わせた株主還元率は、当面、単体当期純利益の40%を目安としています。
また、さまざまな環境・社会課題が深刻になる中、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめとした取組みに、主体的な役割を発揮していくことが重要です。当行でも、2019年2月に「群馬銀行グループSDGs宣言」を制定し、企業理念やSDGs宣言にもとづく事業活動を通じて環境・社会課題解決への貢献をめざしています。2020年度には、新たに総合企画部内に「SDGs&ESG統括室」を設置するとともに、2030年度における温室効果ガス排出量の26%以上削減や紙使用量40%削減といった数値目標も定め、更に取組みを強化していきます。
そうした取組みや中期経営計画の諸施策を展開することで、持続可能な社会の実現と経済的価値の創造に努め、地域社会、お客さま、従業員ならびに株主・投資家の皆さまなど、各ステークホルダーの方々への責任を果たしていきたいと考えております。

  • 2013年度比

おわりに

2008年のリーマン・ショック当時、私は、営業店の支店長として、地域のお客さまの支援に全力を尽くしました。その時、私たち地域金融機関は地域経済のインフラとして欠かせない存在であることを確信し、その果たすべき責任や役割の大きさを学びました。
今また、新型コロナウイルス感染症によって、新たな危機が到来しています。ただし、リーマン・ショックとは異なり、今回の危機は、収束後の環境が、それ以前の社会に戻るのではなく、これまでの生活様式や常識も含め全く新しい社会へと一挙に変えてしまうインパクトを有しています。よって、地域のお客さまへの支援は、資金繰りなどの金融面にとどまらず、ビジネスモデルの変革や転換を含めた幅広いサポートとする必要があります。
今回の危機を乗り越えるためにも、私たちは、これまで申しあげてきたことに着実に取組んでまいります。そして、新たな次元のビジネスモデルへ転換し、お客さまとともに新たな地域社会を創造していきます。
最後になりますが、皆さまには、今後とも温かいご支援を賜りますよう、心からお願い申しあげます。

2020年7月
代表取締役 頭取 深井 彰彦